ガイドオープニング

チェスのオープニングはどこまで深く学ぶべきか

オープニングレパートリーは、深くなるほどコストが増え、効果は下がります。ラインを止める場所は掛け算で判断できます。

誰もが問い方を間違える質問

「オープニングは何手先まで覚えるべきですか?」には、たいてい数字で答えます。10手。頑張って15手。Najdorfなら20手。

数字では答えになりません。コストを決めるのは深さではなく、ポジションの数だからです。深さとポジション数はまったく別です。相手にもっともらしい応手が4つあるラインで1手深くすると、準備するポジションは4つ増えます。強制手順なら1つだけです。

問うべきは、どこまで深くかではなく、そこに到達する確率です。

確率を下げるのは相手の選択

計算は簡単です。

自分の手番では、準備した指し手を選びます。自分で決めるため、次のポジションに到達する確率は変わりません。

相手の手番では確率が分かれます。ある応手が対局の45%で指されるなら、その手の後のポジションには、そこまで進んだ対局の45%で到達します。相手が選択するたび、同じことが起きます。

このポジションへの到達率 自分 e4 100% 相手 c5 45% × 自分 Nf3 45% 相手 d6 17% × 自分 d4 17% 相手 cxd4 15% × 自分 Nxd4 15% 相手 Nf6 9% × 自分の手では同じ。相手の選択で下がる。
実測値ではなく、計算を示す例です。分かりやすいよう、あり得る割合を使っています。相手の選択が4回あると、準備するポジションに到達するのは約11局に1局です。

あり得る確率で相手の選択が4回続くと、そのポジションに到達するのはおよそ11局に1局です。ラインに指し手を足しているときの感覚とは違い、3局に1局ではありません。

15手目まで伸ばすと

深さのコストは、指し手が難しいから生まれるのではありません。確率が掛け合わされるからです。

8手目までラインを準備すれば、定期的に出会うポジションをカバーできます。同じラインを15手目まで伸ばすと、追加した大半は、相手が3回か4回こちらの想定どおりに選んだ先にあります。年に数回しか現れないポジションに、毎週の復習時間を使うことになります。

見落としやすい、もう1つのコストもあります。深いポジションほどトレーニング中に出会う回数が少ないため、最も早く忘れます。つまりレパートリーの最深部は、必要になる可能性が最も低く、必要になる頃には最も忘れやすい部分でもあります。

本当の例外

強制手順では、この計算が有利な方向に崩れます。

相手に負けない手が1つしかなければ、確率は分かれず、そのままです。双方に均衡を保つ手が1つずつしかない鋭いバリエーションなら、20手先まで準備しても十分に価値があります。20手目に到達する確率が、10手目に到達する確率と同じだからです。

同じ助言がすべてのオープニングに当てはまらないのは、このためです。Najdorfのメインラインでは、深く準備するコストが低く、しかも必要です。London Systemでは、相手がほぼ毎回5つほどの妥当なセットアップを選べます。同じ深さでもコストは5倍になり、得られる価値ははるかに下がります。

したがって、正しい基準は手数ではありません。相手に選択肢がないところは深く準備し、選択肢が多いところは早めに止める。

実戦で使える基準

対局中に割合を掛け算する必要はありません。代わりに次を基準にしてください。

助けなしでプランを説明できるポジションに来たら、ラインを伸ばすのをやめます。重要なポーンブレイクは何か、駒をどこに置くか、相手は何を狙っているか。説明できるなら、その先の数手は理解から導けるので、暗記する必要はありません。

説明できないなら、答えは指し手を増やすことではありません。ポジションをエンジンとデータベースで調べ、考え方が腑に落ちるまで向き合うことです。理解できないラインにさらに5手を足しても、失敗する地点が後ろにずれるだけです。

深く準備する価値がある場所

これは浅い準備を勧める話ではありません。深さが報われる場所に、時間を使うための話です。

深く準備する価値があるのは、最もよく出会うラインです。通常はレパートリーの根元に近いラインになります。多くのプレイヤーは逆です。お気に入りのバリエーションは18手目まで知っているのに、3手目で2番目によく指される応手への対応を決めていません。

こうした抜けを推測ではなく見つける方法は、 チェスのオープニングレパートリーの作り方で説明しています。どこまで深く進めるべきかが分かったら、次の制約は全体をどれだけ覚えられるかです。詳しくは レパートリーは実際どのくらいの大きさにすべきかで考えます。

  • レパートリー
  • オープニング学習
  • チェス上達